実体なきもの

ものすごい勢いでやりたいことも、あまり気の進まないことも要するに言って見れば落としどころが重要です。こう表現してみるともめ事でも起きているように思えてしまいますが、人の考えというものも一度湧き上がってしまうとそれを無理やり抑えつけておくことが困難な場合もあります。

もちろん人の道に反することはするべきではありません、しかしきれいごとばかり言って済むほどこの世界は簡単なものでもありません。時には自分のやりたくないこともしなくてはなりませんし、かといって本当にそれを拒まなければならないことも時には起きてくるのが現状です。
それは言ってみれば欲望のようなものです、もしそれにエサを与えてしまえばそれは確実に肥大化していきます。欲望はそれをもっとくれと要求するでしょう。私はそれにエサをやる義務はありませんが、心というものは弱いものなのでそうした要求に応えてしまおうとしてしまいます。

一生懸命にそれにエサを与えることもできるし、適当にいらないものをそれに与えて済ませることもできます。それが気に入らないので全くエサをやらずにそれを殺してしまうことも私たちには可能だと思います。
しかし、一度それを殺したところでそれはまた苦も無く私たちの心のなかに生まれてきます。どこからともなくそれは私たちの目から耳から鼻から入ってくるでしょう。もしそうしたものから逃れたいとして山にこもったところで、今度は過去の記憶を再現することによってそれは再び戻ってきます。

要するに逃げる術はありません、それは波が岩を侵食するように私たちの心を蝕み続けるでしょう。でも本当はそれは実体がありません、私たちは実在する存在ですが、そうした欲望は実体を持っていません。だから彼らはそれを、実在するものへ成就するために執拗に私たちに語りかけるでしょう。
彼らをかたくなに拒否することもできますし、彼らの影響をできるだけ小さくすることもできるでしょう。しかし、注意しなければならないのはそこに愛はないということでしょう。